核兵器を全廃させる、未来からのテロリスト~破壊が生んだもの~  プロローグ

…敬愛する読者の皆様、とりわけ、単なるミステリーファンにとどまらず、 我こそは名探偵なりと自負するご貴殿へ、生意気にも挑戦状をあえて認(したた)めつつ   ときは2095年の夏そして中秋.つまりは二十一世紀の末 […]

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核兵器を全廃させる、未来からのテロリスト~破壊が生んだもの~ 第一章

 直径42メートル(推定)の巨大隕石が、北緯39度55分・東経116度23分の北京を直撃した。  直後、衝突は、速度もだが規模も計測不能な衝撃波(物理学上の計算から、少なくともマッハ4以上だったであろう)や数千度の熱波を […]

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核兵器を全廃させる、未来からのテロリスト~破壊が生んだもの~ 第ニ章(前編)

 独身で、結婚はおろか恋愛経験もない男は、火・木・土のみのナイトキャップにヘネシーXOを嗜(たしな)んだ。口にあうぶん、心までがくつろげたからだ。  左掌上のコニャックグラスには、ストレートでスリ―フィンガー。シャワーを […]

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核兵器を全廃させる、未来からのテロリスト~破壊が生んだもの~ 第ニ章(中編)

 入社一年目の二十歳からずっと、彼の心身に沈着しつづけた重圧、さらに経年の責務と疲労の増大。年々、役職が上がるたびに職責を果たしてきた重荷。そしてついに、社運を背負(しょ)いこんだための大きすぎる負荷に由来する心労、この […]

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核兵器を全廃させる、未来からのテロリスト~破壊が生んだもの~ 第ニ章(後編)

 そんな青い歳から十三星霜を数えた2092年。その間は、勉学と研究に明け暮れ実験に没頭する日々であった。ある意味しあわせで、平穏な人生だったといえよう。  だが大虐殺テロという青天の霹靂のせいで、悶えるほどに慟哭したので […]

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核兵器を全廃させる、未来からのテロリスト~破壊が生んだもの~ 第三章(前編)

「彦原さん、副所長の貴方がとなえる理論の最終形、近い将来、日の目を見るとのことですが…」三カ月ほど前のことである。「それで、タイムマシンの理論を実証する実験も今年中らしい、とか」  探るような視線をむけてきた優男、ただ、 […]

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核兵器を全廃させる、未来からのテロリスト~破壊が生んだもの~ 第三章(後編)

 日毎夜毎、天才科学者の心奥では、納得していないとばかりに不定形の無色透明体がキリキリと音を発していた。音の源はつまるところ、無理やり彼が押さえこんだそのときごとの潔(けつ)麗(れい)な良心であった。  かれの生きざまを […]

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核兵器を全廃させる、未来からのテロリスト~破壊が生んだもの~ 第四章(前編)

 秘密保持がようやくなって百一日目の十一月十八日午前零時十九分、それは予定より二日以上早かったが、巨大な実験装置が完成したのだった。  社が決定したのは十一月二十日午前十時であった。この日の早朝、マスコミ各社へ重大発表と […]

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核兵器を全廃させる、未来からのテロリスト~破壊が生んだもの~ 第四章(後編)

 ところで、以下の1⃣・2⃣・3⃣こそが、三度目の実験の主たるテーマであった。 1⃣ 最大の眼目は当然、生きたまま帰ってこられるか、である。だけでなく、ワームホール通過が生命そのものにどんな影響を及ぼすか?死なないまでも […]

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核兵器を全廃させる、未来からのテロリスト~破壊が生んだもの~ 第五章(前編)

 日米両国関係者の悲願がすべて叶うかたち、つまり、2092年春の帰還から翌年秋にかけて、宇宙における生物実験が最終テストである種(しゅ)の同系交配においても、ノープロブレムというもっとものぞましい結果でコンプリートし、さ […]

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核兵器を全廃させる、未来からのテロリスト~破壊が生んだもの~ 第五章(中編)

 ところで彦原の希望や想いはさておくとして、2チームで構成されていたのである。  2チームとしたのは、ワームホール通過直後、一億四千五百万年前の地球が存在している宇宙空間で、別々の実験をさせるためにだ。当然、宇宙船も別、 […]

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核兵器を全廃させる、未来からのテロリスト~破壊が生んだもの~ 第五章(後編)

 さても…、彦原が企むはじめてのタイムトラベルにおいてもっとも有用となるのが、過去の地球で威力を発揮する、特殊な船外服だ。2095年最新の、彦原お手製ハイテクスーツ、である。かの007ジェームズ・ボンドならずとも、垂涎の […]

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核兵器を全廃させる、未来からのテロリスト~破壊が生んだもの~ 第六章(前編)

 ここで、余談を一章まるごと。  現段階におけるタイムトラベルにかんする、大閑話だ。  CEOのみならずとも、実験が完璧な成功をたとえ収めたとしても、それでもいまだに不完全であることは、読者もうすうす感じていただけている […]

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核兵器を全廃させる、未来からのテロリスト~破壊が生んだもの~ 第六章(後編)

 それらを踏まえたうえでこんどは、紀元後の人類に目を転じよう。  その一 ユーラシア大陸東方の遊牧民だったフン族が、西端のヨーロッパにまで大陸大横断し、その間、他民族を排斥あるいは隷属して大帝国を築いたのだ。  言語学的 […]

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核兵器を全廃させる、未来からのテロリスト~破壊が生んだもの~ 第七章(前編)

 さて予定していた行事、マスコミ発表や晴れやかな完成披露式典ならびに祝賀パーティ等を挙行できなくした驚天動地の大事件。CEOの一安心を完膚なきまでに粉砕した大事件…。  それは、発射予定日ニ日と約六時間前の2095年十一 […]

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核兵器を全廃させる、未来からのテロリスト~破壊が生んだもの~ 第七章(中編)

 「ひ、彦原さんが単身、ド、ドリーム号を発進させましたっ!」部下である主任が、地球最後の日でもあるかのような悲愴な顔で、専務宅に連絡をいれた。いまだ夜もあけぬ午前五時には、およそ不具合な叫び声で、だ。じつは自宅で就寝中に […]

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核兵器を全廃させる、未来からのテロリスト~破壊が生んだもの~第七章(後編)

 秘書が迎えにくるまでの思慮。最悪の事態からどうすればニ時間まえの順調な状況に戻せるか、そればっかりだ。しかし、=こっちから連絡するまえに、そろそろCEOから罵倒の電話がかかってくるやろう¬=との恐怖が小心のかれをビビら […]

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核兵器を全廃させる、未来からのテロリスト~破壊が生んだもの~ 第八章(前編)

発進まえから計画していた準備工作もふくめ、ほぼやり終え、満足の彦原。 そのひとつが特製衣服(ハイテクスーツ)の作製である。このスーツを着用すると、バーチャルリアリティ(=人工現実感)をつくりだし、他者の肉眼は虚像を実物と […]

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核兵器を全廃させる、未来からのテロリスト~破壊が生んだもの~ 第八章(中編)

そんなことより、肝心の“マンハッタン計画”とは…? 知るひとぞ知る、悪魔のたくらみである。日本人にとっては、最悪ではすまない奸計だ。否、全人類にしても、良識ある人々ならずとも逆鱗にふれる悪計である。 読者にたいし、この謀 […]

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核兵器を全廃させる、未来からのテロリスト~破壊が生んだもの~ 第八章(後編)

そんなグローブスに扮した彦原。MCが偽造してくれた身分証を提示し、シカゴ大学冶金(やきん)研究所とそのなかの隔離施設、原子炉シカゴ・パイル1号を単身「見学にきた」と、そう、冶金研究所の当直研究員につげた。十二月十五日の深 […]

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核兵器を全廃させる、未来からのテロリスト~破壊が生んだもの~ 第九章(前編)

あけて、十二月二十日水曜日午前八時。快晴だが、高地であるため外気温は4℃。かれは、当時のバンタイプの中型トラックに姿をかえた小型乗用飛行車を運転している。 コードネームで”プロジェクトY“とよばれたロスアラモス国立研究所 […]

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核兵器を全廃させる、未来からのテロリスト~破壊が生んだもの~ 第九章(後編)

それにしてもと安堵しつつ彦原。検問所の鉄製のごつい門をとおる、たったそれだけなのに、おもったいじょうに時間をくってしまった。しかしながら…、 たいへんなのは、じつはこれからである。玩具(おもちゃ)としてゴリラ似軍曹に玩( […]

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核兵器を全廃させる、未来からのテロリスト~破壊が生んだもの~ 第十章(前編)

しょっぱなの、例のトイレ。その個室で、ゼネラル・エレクトリック社の運転手に戻らねばならない。でないと、ゴリラもどき軍曹が「ホールドアップ」と命じるであろう。 で、急ぎ飛びこんだのだった。ところが、慮外の光景が眼前にはあっ […]

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核兵器を全廃させる、未来からのテロリスト~破壊が生んだもの~ 第十章(中編)

五星霜(五年)超である、正確を期せば。研究所の副所長のときから、相談者などずっといなかった孤独ななかでの思考と苦悶の日々だった。 すすむも止まるも堕地獄の一年、また一年。くるしみ・なげき・さけび…それら無間(むげん)(= […]

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核兵器を全廃させる、未来からのテロリスト~破壊が生んだもの~ 第十章(後編)

  殺しあいをきそう、あまりにバカげた、このような戦争そのものを、彦原は嫌悪した。イノセント(=罪のない)な人々の命を奪いあう戦争を、つよく憎んだのだった。 しかし離陸から四分、眼下の光景をまのあたりにしてしま […]

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核兵器を全廃させる、未来からのテロリスト~破壊が生んだもの~ 第十一章 (完)

 なにはともあれ、歴史はかわった。核兵器は、完全に消滅したのである。 スターリンは核兵器製造を断念した。米国をふくむ歴史も随分とちがうものに。 帰結として、とくに科学分野にかかわる歴史がおおきくかわったのである。有能な科 […]

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