カテゴリー: 秘密の薬 (page 1 of 24)

~秘密の薬~  第二部 (166)


人生最悪の窮地。心の闇が深すぎて、その終点がみえてこないのだ。
いくら泣き叫んでもこだまさえも帰ってこない、果てなき暗黒の宇宙さながらであった。

~秘密の薬~  第二部 (165)

経験したひとにしかわからないであろう。混乱や恐怖、そして自棄。それこそここまでがリミット、をかんじられない闇黒でしかなかったのだから。

~秘密の薬~  第二部 (164)


しかし 心はやはり支離滅裂の、いや暗黒の感情に支配されたじぶんであった。
せめて支柱があれば、すこしは強くなれるだろうに。にもかかわらず肝心のこのとき、ああ、支え護ってくれるひとがいないのだ…そう、そばに誰も。

~秘密の薬~  第二部 (163)

このままではまえに進めるはずもない。不安や孤独・絶望、だけでなく過去に捕らわれたままでは、愚かで哀れな身でしかないなども、もちろん頭では…。

~秘密の薬~  第二部 (162)


くわえて、通夜や葬儀の前後もおもい煩っていた。そのあと体調を崩し、ベッドで横になっていたときも。

~秘密の薬~  第二部 (161)

悲嘆にくれても、ふたりがそれを喜ぶどころか悲しむだけで、また「わたしが駅に迎えにいっていれば」との悔いや怨嗟に身もだえをしてもなにも生まれない、それが現実だとも。

~秘密の薬~  第二部 (160)



ここで、誤解を招かないためにひとつ。

~秘密の薬~  第二部 (159)



ここで、誤解を招かないためにひとつ。
こどもが一人きりではなく、複数人数であったとしても、亡くなった子への悲嘆が薄らぐものでは決してない。こどもはまだ他にもいるから、なんておもえるはずもない。

~秘密の薬~  第二部 (158)


それが、なにものにも代えがたい存在以上だったのに…。
たしかに、外ではほとんど飲まなくなったわけだが、いまにしておもえば母でもあった妻を、ありったけの存在で労わりたかったのだと。もっといえば、溢れんばかりの愛情表現でもあったのだと。

~秘密の薬~  第二部 (157)

とめどなくながれる涙に、夫はハンカチを手わたすと、悲しみと慈愛の眼差しでより添ってくれたのだ。うち震える肩には、さりげなく情愛の手が背をさすったのだった。さらにやさしい声が、哀惜や辛酸でみちた心をなぐさめてくれる日々であった。

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