ではコンピュータに精通し、第一級技能のハッカーに比肩する人物とはだれか?
既述したとおり、藤川をさしていた。そのかれなら、いまは隣室にて見学中である。そこへ唐突に、“あっかんべえ”のサインが送られたのだった。
さて、取調べなどで快調なペースになると、この手のおあそびをする性癖が、矢野にはある。一種のおちゃめといえようか。
で、藤川。鑑識が持ちかえったパソコンを、このあと弄る予定だった。が、いましがたの矢野からのサインにより、中止で了解したのである。
というのも、東の言動から矢野はすぐさま、闇サイトをつかっての銃の注文は、これをしていないと確信した、ことによる。
にもかかわらずの矢野、「おまえがけした証拠を復元するくらい、こっちは朝飯前なんだよ」と言いきった。それはこれで、東がボロをだすかもしれないとあわく期待したからだった。
そんな魂胆もあって、キミからあんたに、そしておまえへと呼称をかえたのである。
ところで矢野警部のほんとうのところ。
それは、理不尽にもひとの命を収奪するケダモノには、強烈すぎる憎悪をいだいてしまうことだ。罪を憎んで人を憎まず、などというキレイごとにはまったくもって納得していない。
このおもい、もちろん、両親を殺された惨事と無関係であろうはずがない。
そこへ、待ちにまった電話のコールが。すかさず聞こえた「警部の見たて…」との、藤浪の第一声のトーンで、朗報とわかった。
それがどのていどかは不明だが、「見たてどおりでした」から、すくなくとも取調べを進展させることはできそうだとふんだ。
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