月別: 2022年11月

~秘密の薬~  第二部 (108)

ねえ、人権派は事実なの?だけでなくさらに惑った。どこまで身を預けていいのか、期待に応えてくれるのか、それとも…。 やはり不安だ。

「早いもので、もう二年になります」と、学友だった彦原茂樹はすこしはにかみながら席をすすめたのだった。
 それにはぎこちない笑顔でちいさく会釈し、コートを脱ぐとソファーにすわった。座り心地はよろしくなかった、がそんなことはどうでもよく、
いきなり事故のあらまし、ならびに血中アルコール濃度の差、目撃証言、ドライブレコーダーの映像の存在などなど、検証事実の内容を順序だてて、その必要性に鑑みとりあえず陳述したのである。

~秘密の薬~  第二部 (107)

=ああそういえば、哲の通夜と葬儀に列席してくれたのだ=そのときが最後だったことをおもいだしたのだった。それでまずは、臨席の礼を慇懃にのべたのである。

~秘密の薬~  第二部 (106)

ねえ、人権派は事実なの?だけでなくさらに惑った。どこまで身を預けていいのか、期待に応えてくれるのか、それとも…。 やはり不安だ。

ところでお世辞にも、男前とはいいがたい腫れぼったい瞼にほそい目が、しかしながら懐かしくおもえたのである。
=そうだった=と、十数年まえの古い記憶とつながったのだ、なんども息子が招待し、学友として訪問をうけていたときと変わらず

~秘密の薬~  第二部 (105)

「お久しぶりです。お待ちしておりました」と、イスからたちあがったかれの左胸に輝く金色の弁護士バッジ。それに描かれているひまわりに似て、人懐っこい破顔のその口が、「どうぞお入りください」といったのだった。