その温みある雰囲気におかげでホッとし、すこしだったが和むことができたのである。
その温みある雰囲気におかげでホッとし、すこしだったが和むことができたのである。
暗さのまじった複雑な表情で息をきらしながらノックをし、重いドアをあけた。丁番のきしむ音が不快感を、いやましつよくした。
ではあった。が、間仕切りのない狭い事務所から、還暦をとっくにすぎた口紅以外には化粧っ気のない女性と、三十代の男性が一笑で迎えてくれたのだった。
民事・刑事の分類にはじまる、彦原君の得意分野は?また案件を抱えすぎてるかも。でもって健康状態は?
そうこうするうち、教えられたビルのまえまできたのである。
ああ、都内にもまだこんなビル(エレベーターが設備されていない)があるんだと、妙な感心をする余裕もなく、照明のせいでうす暗い階段を“悔し踏み”しながら登り、ようやく教えられた部屋のまえに、妙はたったのだった。
すると悔しさと怒りがよみがえり、そうしてこの火はまだまだ消えそうにないとしった。
ある意味当然で、それほどの衝撃だったからだ。
それにしても弁護士として会うのははじめてであり、いろんな意味で、たとえばいまのかれの状況もしるはずないのだから。
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