ねえ、人権派は事実なの?だけでなくさらに惑った。どこまで身を預けていいのか、期待に応えてくれるのか、それとも…。 やはり不安だ。
ところでお世辞にも、男前とはいいがたい腫れぼったい瞼にほそい目が、しかしながら懐かしくおもえたのである。
=そうだった=と、十数年まえの古い記憶とつながったのだ、なんども息子が招待し、学友として訪問をうけていたときと変わらず
ねえ、人権派は事実なの?だけでなくさらに惑った。どこまで身を預けていいのか、期待に応えてくれるのか、それとも…。 やはり不安だ。
ところでお世辞にも、男前とはいいがたい腫れぼったい瞼にほそい目が、しかしながら懐かしくおもえたのである。
=そうだった=と、十数年まえの古い記憶とつながったのだ、なんども息子が招待し、学友として訪問をうけていたときと変わらず
「お久しぶりです。お待ちしておりました」と、イスからたちあがったかれの左胸に輝く金色の弁護士バッジ。それに描かれているひまわりに似て、人懐っこい破顔のその口が、「どうぞお入りください」といったのだった。
その温みある雰囲気におかげでホッとし、すこしだったが和むことができたのである。
暗さのまじった複雑な表情で息をきらしながらノックをし、重いドアをあけた。丁番のきしむ音が不快感を、いやましつよくした。
ではあった。が、間仕切りのない狭い事務所から、還暦をとっくにすぎた口紅以外には化粧っ気のない女性と、三十代の男性が一笑で迎えてくれたのだった。
民事・刑事の分類にはじまる、彦原君の得意分野は?また案件を抱えすぎてるかも。でもって健康状態は?
そうこうするうち、教えられたビルのまえまできたのである。
ああ、都内にもまだこんなビル(エレベーターが設備されていない)があるんだと、妙な感心をする余裕もなく、照明のせいでうす暗い階段を“悔し踏み”しながら登り、ようやく教えられた部屋のまえに、妙はたったのだった。
すると悔しさと怒りがよみがえり、そうしてこの火はまだまだ消えそうにないとしった。
ある意味当然で、それほどの衝撃だったからだ。
それにしても弁護士として会うのははじめてであり、いろんな意味で、たとえばいまのかれの状況もしるはずないのだから。
ねえ、人権派は事実なの?だけでなくさらに惑った。どこまで身を預けていいのか、期待に応えてくれるのか、それとも…。 やはり不安だ。
哲のいわく、人権派とのこと。しかし、自分がしっている”彦原君”は十数年以前の、世間の荒波にもまれるまえの、いわばまだ子どもでしかなかったわけで。
期待は、頼れそうな存在ができたことによる安心感に。 しかしそれが、全幅の信頼をもてるかまでは判らないていどで中途半端、だったからだろうか、先ほどの情景がぶり返したのである。
道すがら、
未知と未経験のさなか期待が刹那あらわれ、ところが人間とは所詮こんなもので次の瞬間、不安にかられたのだった。
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