投稿者: jyuri (page 8 of 40)

~秘密の薬~  第二部 (96)

道すがら、
未知と未経験のさなか期待が刹那あらわれ、ところが人間とは所詮こんなもので次の瞬間、不安にかられたのだった。

~秘密の薬~  第二部 (94)

課長とつげたが、なるほどウソではなさそうだ、とそうおもった瞬間だった、
「退職の日の事故、これって、偶然でしょうか?」こんな大事なこと、訴えるのを忘れてしまったことを。冷静さを失っていたからか、気力をなくしてしまったからなのか?

~秘密の薬~  第二部 (95)

どちらであったとしても、しかし現況のじぶんには、もはやどうでもよかった。
そんな過去のことより、彦原君ならば、きっと寄り添ってくれるであろう、期待していいはず。いや正直いうと、そうであってほしい、だったが。
ともかくも、願望をよすがに足早に歩いたのである。

~秘密の薬~  第二部 (93)

課長と名乗ったが、事実だろうし、ならば若さゆえに経験不足そのもののはずで。テレビドラマなどでしるかぎりだが、現場自体をほとんどしらないであろう。
だからか、頭でっかちな先刻までの口振りとなったのだと妙。

~秘密の薬~  第二部 (92)

法律事務所へむかうその端緒、おもったのだった。どれほどまでかはしる由もないが、それでも期待をもてそうだと。それで平常心にもどりはじめたのである。
それにしてもあの担当官、年齢からみてキャリア(かれが警視正であれば、まちがいなくそうだ)組とおもわれる。

~秘密の薬~  第二部 (91)

ちなみにしる由のない電話番号だったが、急ぎSNSで調べたのである。

おもいだしたくはない、が消え去るはずのない記憶。三年まえのかの日リビングにて。

これ以上はないほどに絶望していた最愛の夫。その、血色がなくなった素の顔、光をうしなった眸や力のない眉、などをおもいだしつつの検索であった。

ただ、じぶんが似た表情になっているとまでは、気づかないままに。

~秘密の薬~  第二部 (90)

=そういえば、なんて名前だったかしら。たしか、珍しい苗字だったけど…=おもいだすのに、すこし時間がかかった。=そう、そうだった彦原、彦原君よ。まちがいない=

~秘密の薬~  第二部 (89)

すぐさま気持ちを反転させると、押っ取り刀(大急ぎで駆けつける)で向かうべく、駅への道すがら、相談申込みの電話をかけんとスマフォを取りだしたのである。

~秘密の薬~  第二部 (88)

たしかに憤懣と挫折感、自責、そんなカオスのような精神状態ではあったが。とはいえそれでも、はやい段階で脳裏にうかんだのだった。 賢明な人だからか。

~秘密の薬~  第二部 (87)

また、自慢げの哲の眸には明朗さがくっきりと現れ、さらには煌めきまでもくわわっての。

それでそのとき妙は、友人を掛け値なしでほめる息子を、ぎゃくに好ましくおもったものだった。

そんな在りし日々の記憶が、出来(しゅったい)したのである。

« Older posts Newer posts »