とそこへ事務をしていた女性が、「この子の母です。申しますに、なんどもお世話になったと先刻。それで、できる限りのことをさせていただくとそう」といいつつ、インスタントコーヒーをテーブルにおいた。
そして、自席へさりげなく戻っていったのだった。
その母信子を、弁護士はやさしい眼で追っていた。
ついでかれは、慨嘆ののちに嗚咽しはじめた依頼人の、そんな心情を忖度したのである。人生の伴侶を喪った真情からでた、真実の叫びとかんじたがゆえに。
とそこへ事務をしていた女性が、「この子の母です。申しますに、なんどもお世話になったと先刻。それで、できる限りのことをさせていただくとそう」といいつつ、インスタントコーヒーをテーブルにおいた。
そして、自席へさりげなく戻っていったのだった。
その母信子を、弁護士はやさしい眼で追っていた。
ついでかれは、慨嘆ののちに嗚咽しはじめた依頼人の、そんな心情を忖度したのである。人生の伴侶を喪った真情からでた、真実の叫びとかんじたがゆえに。
とそこへ事務をしていた女性が、「この子の母です。申しますに、なんどもお世話になったと先刻。それで、できる限りのことをさせていただくとそう」といいつつ、インスタントコーヒーをテーブルにおいた。
そんな言動にたいし、弁護士はどうであったかというと、全身を耳とせんばかりに聞きながら、かのじょの哀訴のその奥にひそむ口惜しさに、すでに心を揺さぶられていたのである。
だがそのときはさすがに眼はやや血走り、おもわず感情あらわにつよい口調となってしまった。警察への怒りが、じぶんが発した言葉につられて炎上したからだ。どうじに、肩をふるわせたのだった。
つづけて、事故と断定した警察の所見にたいし、異議申し立てしたその内容をわかき弁護士に語ったのだった。
それで、わかりやすくしかも順序だてることができたのである。ただし、怒りや悔しさはそのままであったが。
でもっての肝心の本題。だったからこそ、はやる気持ちを抑えきれず、
「訴えを警察はとりあげてくれませんでした。それで相談しに」きたと、そのことを二度力説したのである。生意気だった担当官のようすなど、引きも足しもしていないあらましをのべたあと、切実なおもいとして。
それで、わかりやすくしかも順序だてることができたのである。ただし、怒りや悔しさはそのままであったが。
それら必要な個所を、事務担当の女性は書きとっていた。
ところでいきなりとはなったが、電話をかけてから三十分いじょう経過したせいもあろうか、冷静さをとり戻しつつあったのだ。
すこし早口で。
ちなみにいましがただったので、妙の記憶に寸分のまちがいもなかった。担当官がのべたふたりの証言内容についてである。
ねえ、人権派は事実なの?だけでなくさらに惑った。どこまで身を預けていいのか、期待に応えてくれるのか、それとも…。 やはり不安だ。
「早いもので、もう二年になります」と、学友だった彦原茂樹はすこしはにかみながら席をすすめたのだった。
それにはぎこちない笑顔でちいさく会釈し、コートを脱ぐとソファーにすわった。座り心地はよろしくなかった、がそんなことはどうでもよく、
いきなり事故のあらまし、ならびに血中アルコール濃度の差、目撃証言、ドライブレコーダーの映像の存在などなど、検証事実の内容を順序だてて、その必要性に鑑みとりあえず陳述したのである。
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