とそこへ事務をしていた女性が、「この子の母です。申しますに、なんどもお世話になったと先刻。それで、できる限りのことをさせていただくとそう」といいつつ、インスタントコーヒーをテーブルにおいた。

そして、自席へさりげなく戻っていったのだった。

その母信子を、弁護士はやさしい眼で追っていた。

ついでかれは、慨嘆ののちに嗚咽しはじめた依頼人の、そんな心情を忖度したのである。人生の伴侶を喪った真情からでた、真実の叫びとかんじたがゆえに。