投稿者: jyuri (page 14 of 40)

~秘密の薬~  第二部 (41)

しかしそんなことなどお構いなしの妙は真剣な眸で、計測そのものに不備があったのではないか、また、不備を確認するための検証はしたのか?と、体ごとぶつけんがごとくに詰め寄ったのである。

~秘密の薬~  第二部 (40)

いっぽうの妙がその説明からうけた印象はというと、いわゆる“いい分”でしかない、だった。
感情的にとはいえ“いい分”としたのには、かのじょなりの理屈もあった。ただしはた目には、屁理屈にきこえる代物ではあるが。

~秘密の薬~  第二部 (34)

そうしてのやがて、元来頑健な体の持ち主だったおかげと訪問診療をうけたことで、症状はほぼ治まったのだった。
ようやくのこと、
声から、先日とはべつだと判断できた担当官に、「泥酔が原因だなんて、夫にかぎって…」憤慨の色がみちみちた涙声で、こう一心に何度も。

~秘密の薬~  第二部 (33)

それにしても葬儀後の妙は、最悪の体調ですごすこととなった。高熱に咳,嘔吐、悪寒に頭痛、大切な家族がいなくなったことが、どれほどであったか。
 そんななかでも、かのじょの人柄が如実にでたことがあった。遠来の友人の訪問には、必死で応えていたのである。

~秘密の薬~  第二部 (32)

ではあったが、かのじょは納得など全くしなかったのである。電話が切れたあとのことだったが、
「なにを馬鹿な!」しだいに増幅していった怒りは、発したこの一言に凝縮していた。
それで十日後、「再度の捜査を」と署へ、懇願、というより申し出をすべく足を運んだのだった。かのじょにとっては、当然の言行であったのだ。

~秘密の薬~  第二部 (31)

葬礼のつぎの日、電話で報告をうけた妻の妙(たえ)。
現場検証のあらましとふたりの供述内容、そこから導きだした結論などをつげた担当官はその最後を、
「せまい道路でガードレールも設置されておらず、もしそれがあれば車道に転げでることはなかったでしょうに…。残念すぎる事故です」
このような悔やみのことばで、しめくくったのだった。

~秘密の薬~  第二部 (30)

どうじに警察官たちは、さらなる検証もつづけたのだった。
で、そののちのこと、現場を管轄する八王子警察署がだした結論。それは事件性のないたんなる人身事故、であった。

~秘密の薬~  第二部 (29)

事故当時者はトラック運転者としての歴もながく、あたり前だが飲酒もしておらず、提示した運転免許証は、無事故無違反のゴールドであった。
で、この供述にウソのないことが、べつの担当官による聴取で確認されたのだった。
「駅方向にむけ歩いていて、たまたま見かけたのですが」そう、事故をすぐ間際で目撃したと語った人物がおり、
「高齢の男性が千鳥足でふらふらと。でもって、路面に足をとられたのか、滑りこけるようにして車道へと倒れていった。間が悪いとしかいいようがないのでしょうが、そこへ車が…」と、そのときのことをマスク越しにかく証言したのである。

~秘密の薬~  第二部 (28)

「いくら自動運転車でも、避(よ)けようも停車しようもありませんでした」申し訳なさそうに、駆けつけた警察官に頭をさげたというのである。
これらの陳述は、事故発生から約十四分後のことであった。
ちなみに警察官の到着は、通報から約十二分後のことで、供述はそのパトカーのなかでなされた。

~秘密の薬~  第二部 (27)

で、なんかの拍子に、車道にたおれこんだのだが、まさにその瞬間、その上半身をひいてしまったと、自動運転車の運転席に乗っていたおとこが、そう供述したのである。
千鳥足だったうえに、今夜は寒さもとくに厳しいですから、路面が凍っており、それで足を滑らせたのかもしれませんね、とも。


で、なんかの拍子に、車道にたおれこんだのだが、まさにその瞬間、その上半身をひいてしまったと、自動運転車の運転席に乗っていたおとこが、そう供述したのである。
千鳥足だったうえに、今夜は寒さもとくに厳しいですから、路面が凍っており、それで足を滑らせたのかもしれませんね、とも。

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