とここで、あまりにも長い白昼夢ではあったが、この段階にいたり、ようやく醒めたのだった。
秀吉豹変のナゾ解明ではじまった白日夢だったが、それにしてもおもわぬ展開となってしまった。
歴史小説を、曲がりなりにも著わしてきた、それまでに貯めたつたない知識が、手前味噌と増上慢(このうえない慢心)をゆるしてもらうなら、横溢したけっかであろう。
むろん歴史家たちからみれば、噴飯ものの浅識だと承知している。
まあ、しょせんは素人とやり過ごしてもらうとして、それにしても、いかにもボクらしいとおもった。
影武者秀吉から関ヶ原の合戦その前後へと、はなしが勝手に横道にそれたことが、である。
意識がしっかりしていてもやらかすのだから、まして意識のおぼろげな白昼夢のなかでは、脱線もいたしかたないことだと。
ところで、秀吉に影武者がいたとしても、夢心地のなかとはいえ、なんの違和感ももたなかった。
なぜなら、鎌倉幕府滅亡のキーマンである後醍醐天皇や家康をはじめ、幕末の将軍家茂の正室だった皇女和宮や明治天皇にもいたとされるほどだからだ。ほか、ヒトラー、スターリン、金日正、サダム・フセインなど、独裁者におおい。暗殺をおそれるためだろう。
これらを題材にした出版物もすくなくない。なかでも、有吉佐和子の小説“和宮様御留”は有名である。
そしてまた、歴史上の人物の子にも双生児が…。たとえば天皇家にも存在したようだし、家康ももうけている。クレオパトラ七世とアントニウス(カエサルの後継者)の子もツインズだ。伝説の、ローマ建国の祖もそういえば双子である。
さして珍しくはないというわけだ。
さて、われに返ったボクは…