下調べをしている身(東)からすると、その姿、不審な行動をしていると、ひとはみるであろう。ならば、世間もだが、とくに警察官の緊張感がとぼしいにこしたことはなかった。

時間があいたというより、必要があって、あけていたとの供述であった。

これに、矢野は満足したのである。

時限装置をつくったり、標的とした両元議長の下調べをしたりなどは、自供ととらえていい内容だ。警察内部の気のゆるみ云々も、本音ととれた。供述をとるねらいも、当然ながら真実を引きだす、にあったのである。

「でないと、同時爆殺に失敗するかもしれないからな」と矢野。皆のおもいを代表した。「つまり、復讐するに、それぞれ、チャンスは一回こっきりだった、からだよな」

 極悪犯はゆっくり首肯すると「失敗すれば、そいつらにたいする警備が厳しくなるからな」そう、補完的な説明をした。

この答え、和田もだったが、予期したものであった。

さて、取調べ室でのやりとりだが、可視化が法制化されたこともあり、もちろん録画録音がなされている。

「万が一失敗したばあい、それでも完遂するには、それこそ、ほとぼりが冷めるまで、一年くらいは待たねばならなくなる。やつらは高齢だから、それまでに仇が死ぬかもしれない。ボクが手にかけてこその復讐なのに、手の届かないところに勝手にいかれては…、だから、一発必中が絶対条件だった」

そう吐きすてるようにいったが、眸の焔ほむらは、奥でまだ燃えていた。

それは復讐の意義を、共感まではムリだとしても、だれかに知ってほしいからと、矢野にはそうみえた。