しかし、「なるほど、復讐するのもたいへんだな」矢野は皮肉った。「さて、今のはなしで確信がもてたよ。なぜ、一件は時限爆弾なのに、もう一方はドローンをつかったのか。同時にでないと、もう一方が警戒するだろうと」

「どちらも、場壁が特別国家機密保護法という悪法を、強行採決させたときの両院議長だったからだ!」

 すでにあたりをつけていた憶測が正着だったとしり、和田たちがいだいていたナゾがとけたと。

ひとつは、なぜ議員ではない人たちだったのか。ふたつめは、似た立場(元議長)の被害者だけに、数分ていどの誤差なら、犯人にとっての支障はないが、半時間いじょうの誤差だと、爆殺事件の報道がなされ、まだ殺されていない人間が警戒するにちがいないからだ。

「ではなぜ、どちらも時限爆弾にしなかったのかね?」

「報復とはなにか、あんたはわかっていないな」表情も口吻も、冷静そのものだった。

「ぎゃくだよ。両方ともに、ドローンで攻撃したかったんだ!ホントはね。それなら、死ぬところをカメラをとおし見れるから…。けど、それには共犯者がいなくては…ね」

 復讐を実行する人間のおそろしさに、全員の、背筋が凍えたのだった。

「ならば、元衆院議長のほうに時限爆弾をつかったのはなぜかね。どちらかというと衆議院がさきに強行採決したぶん、罪も重いだろうに」

と矢野はいったものの、元参院の議長には、個人秘書の迎えがあるとしっていた。それで時間が正確となり、確実な時間設定ができるからと、矢野はそうふんでの質問だった。そのための、東による下調べであったと。

「衆院議長のほうは、病気の妻の受診に同行するため、だったよね。にもかかわらず、女というやつは、時間にルーズだからね」元とはいえ、規律のきびしい自衛隊員からみればそうおもえるのだろう。