ぎゃくに、犯人にとってはアリの一穴だ。それに端をはっするところの破綻だが。まず、その一穴は、いったいどこにあるというのか、である。
それがあると信じ、なんとか探しだす!全精力をそこに集中させるしかないと。
ほころびを見つけるその手がかりを探るべく、矢野は再度、犯人の立場になってみた。
大学を断念して陸自の隊員になり、特殊部隊に配属されるまでにがんばったのは、父親の仇を討たんがためだ。普通の生活を、いな、だれもが希求する幸せな人生をあきらめて人殺しになったのは、そうしなければ、どうにも納得がいかないからだ。
殺される理由などまったくなかった父親の無念を、なぐさめる手段。それを、高校生最後の一年間強、息子として考えぬいたけっかが、復讐であった。
そう、復讐、これしかない!
父親は、凶弾によって尊い命をうばわれたのだ。ならば、まずは、法の成立および施行させた主要人物ふたりも、銃弾によって殺害されなければ、不公平だ。で東は最初に、場壁を狙撃したのだろう。
《目には目を歯には歯を》的報復でこそ、溜まりにたまった溜飲をさげられると。
つぎに、岩見を爆発物でほうむったのは、犯行の手口などから、その連続性をみきわめる警察の、警戒の、網の目のそとで復讐をしやすくするためだった。それには、捜査員の眼をあざむかねばならない。
簡単にいえば、手口をかえることで、同一犯の犯行に疑問をもたせたかったのだ。でもって、つぎ以降の犯行をしやすくできる。
こうして、第三、さらにその先の犯行というふうに、東は、凶悪犯罪を重ねていったのだ、復讐心は、異状心理なのだと気づくことなく。
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