で、じつはこのとき、最悪の事態がそう、のどまで出かけたのだった。

 しかし言えなかった。愛する妻に心配をかけたくなかった、がいのいちばんの理由。

 ついで、どのみちプロジェクトを完成させるしかないのだ、ならば自分が長となってやり遂げるほうが、よりましな新薬を創れるはずと。

 出世第一主義の部下にまかせた場合…、急ぐあまり、また経費軽減も考慮し、粗悪な薬をつくってしまうかもしれない。