それでも、涙はでなかった。
「いつまでも冬がつづくはずない。春は必ずくる!」と、心が声をあげたからだった。叫ぶほどのおおきさではなかったが。
その涙だが、実をいうとでなかったのではない、流さなかったのである。もし泣けば、完敗を認めたこととなる。
ならばと無理やり抑えこんだのだ、自尊心のゆえに敵の地にいるあいだだけでも。なんとしてでも。