ところでこの弁護士には、へんな性癖があるようだ。言葉づかいがである。
そこは読みびとに、いずれ気づいていただけるとして、
さて人権派云々についてはいまはともかく、人情派とよばれるにふさわしいこの斟酌に、これならばと安心をいだいたようす。
ところでこの弁護士には、へんな性癖があるようだ。言葉づかいがである。
そこは読みびとに、いずれ気づいていただけるとして、
さて人権派云々についてはいまはともかく、人情派とよばれるにふさわしいこの斟酌に、これならばと安心をいだいたようす。
妻であるじぶんにもいえない社の極秘事をかかえていたことをまず。
「それは霞が関の、エリート官僚からの要請による新薬開発でした。ただ残念なことに、どんな新薬かまでは…」
と申し訳なさそうに瞑目し、そのあと首をかしげながら小さく「ううん」とうなった。
涙をハンカチで拭いながら、かすかな笑みを恥ずかしげの表情にまじえ、みせたのだった、ようやくというべきか。
先刻までは激情が先行したため伝えきれていなかった情報、だけではなく弁護士にある意味誘導されたことで、いままでに蓄積していた憶測や仮定をもふくめ、語りだしたのである。
寡婦の、悲嘆や憤怒だけでなく、これからの不安にゆらいでいる眸を見すえつつ、かれはこうのべたのだった。」
それにしても、悲しみの再会となってしまった。
そんな、旧友の母の怒りや苦悶に同情しつつ、ではあったが、依頼人の憤慨を鎮めるべく、一言一句えらびながらつづけたのである。
「奥様の主張には、ご家族ならではの当然の理があると。ですから、徹底的に調べさせていただきます。そのためにも、ご主人にかんし情報がほかにあれば、どんな小さなことでものこらず全てをどうか」 た。及ばずながら、引きうけさせていただきます」
それにしても、悲しみの再会となってしまった。
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